藤山雷太の宝ものガタリ
003

たいせつ番付




長崎県の有名なお菓子といえばカステラ。おいしい店はたくさんあるけれど、印象に残っているテレビCMは文明堂だ。

カステラ1番
電話は2番
3時のおやつは文明堂~♪


このコマーシャルソングを知っている方も多いと思う。だだ、ひとつ疑問が。

電話は2番 ← これ、どゆこと?


というわけで、こんにちは。
株式会社スチームシップのキャプテンCEO 藤山雷太です。

文明堂のカステラは東京でも有名ですが、以前、僕が東京で働いていた頃に思っていたことがあります。この街では有名な企業で働いているかどうかで「なんとなくカテゴライズされてしまうな」と。

東京の人がみんなそうだとは言いませんが、初対面で「どこで働いているの?」みたいな質問をされ、有名な企業だと「おお!」って感じだけど、あまり知名度がない企業だと「ふ~ん」みたいな。

職場とか居住区(高級住宅街に住んでいる)とかで、ヒエラルキーが存在するといいますか。東京は人が多すぎるから、そういう単純なところで、ざっくりと人を判断したほうが手っ取り早いのかもしれませんけど。


僕が働いていた DeNA も今ではプロ野球の球団を持ったりして有名企業になりましたが、当時はまだ知る人ぞ知る(感度の高い人だけが知っている)会社でした。

初対面の人に「ふ~ん」みたいなリアクションをとられまくっていた20代前半の僕は思いました。「がんばって何かを成し遂げないと、誰にも認めてもらえない!」「スキルアップして自分の価値をつくって、みんなに『おお!』って思ってもらいたい!」「努力して、必ず幸せをつかむ!」と。


でも、そんな僕の考えは、結婚を機に一気に変化します。


あれ、なにこれ。

がんばらなくても、ありのままの自分を認めて、受け止めてくれる人がいる。がんばっていないのに、なんか、いま、幸せかも…?あれ、幸せって、がんばらなくても手に入るものなの…?

仕事では努力して自分の価値を生み続けないと、たぶんみんな離れていってしまうでしょう。でも家族の場合、そんなこと全くなくて。がんばらなくても寄り添ってくれる人がいる。とてもとても、あたりまえのことかもしれませんが。僕は結婚して気づいたんです。


「家族は仕事よりも大切だ」って。


どんなに仕事で成果を出しても、仕事を優先することで家族の間にミゾができたり、家族が離れていってしまっては、幸せになんてなれるわけがない。

だから僕はスチームシップの理念として、こんな言葉を掲げました。


【家族が1番・仕事が2番】


「仕事は2番目でいいよ」と堂々と言う会社なんて、めずらしいかもしれませんね。でも、ほかの会社がどこも言っていないなら、それを言葉にすることはスチームシップの価値になるはず!

家族が1番と言いきることで、クルー(社員)も家族に何かあったとき、引け目を感じることなく「仕事を休みます」と言える。そんな環境をつくりたかったんです。

地域で仕事をする(=生きていく)人って、その理由の何%かは「家族のそばにいたい」という気持ちがあるはず。その気持ちに寄り添いたいし、僕自身、家族を大切に思うクルーたちといっしょに仕事をしたいと思いました。


それと、もうひとつ。これはスチームシップを立ち上げる前。東京からふるさとに帰ってきて、佐賀で仕事をしていた頃の話ですが。

病気で父親が他界しまして。母親と4人の兄弟姉妹、家族みんなで父の最期に立ち会ったんです。「ムツゴロウ会」というソフトボールチームに入っていた父が、朝の6時56分(むつごろう)に息をひきとって。「ダジャレが好きだったお父さんらしいね」と家族で言い合って。

毎年いっしょに旅行に行くとか、そんな仲良し家族ではなかったけれど、本当に大事な瞬間、家族全員が集まった。集まれた。亡くなるまでの1年間ほどは、みんな何度も病院に通って、父との時間を過ごせた。それができたのも兄弟姉妹みんなが、ふるさとのそばで暮らしていたからだし、悲しさとか、苦しさとか、つらさとか、そういう想いも全部ひっくるめて、家族にとって大事な時間を、家族みんなで共有できた。ひとつになって、最期まで、父と向き合えた。そんな家族の時間よりも大事なものが他にあるだろうか。


やっぱり家族が1番です。


それは、これからもずっと、胸を張って言い続けます。

さて、そろそろ日が暮れてきました。妻と幼い娘が待つ、わが家に帰る時間です。今日は近くの和菓子屋さんに寄って、おみやげにカステラでも買って帰ろうかな。




※参考【文明堂TVCM】